上島Stories

Kamijima stories

かみじま郷土話⑧ 弓削島荘遺跡と荘園遺跡

2021年08月01日 曽根 大地

史跡弓削島荘遺跡全景

 国の文化審議会は令和3年6月18日(金)、弓削島荘遺跡について「中世の荘園の具体的様相を知る上で稀有な事例であるとともに、瀬戸内海における中世の製塩業の実態や、瀬戸内海の海上交通を知る上でも重要である」として、国史跡に指定するよう、文部科学大臣に答申しました。弓削島荘遺跡は7か所の遺跡で構成され、複数の遺跡を荘園遺跡として一体的に捉えているところが特徴的です。このような遺跡は全国的にも珍しく、例としては大阪府泉佐野市の日根荘遺跡や、群馬県太田市の新田荘遺跡などが挙げられます。

 日根荘遺跡は、現在の泉佐野市域にあった九条家領の荘園であり、「日根野村絵図」などに見られる寺社などの建造物、ため池、丘陵などの中世の景観が現在まで残されていることが評価され、16か所が国指定史跡に指定されています。

 また、大阪の近郊にありながら、農村景観や山林景観が広がり、史跡と融合した歴史的な景観が現在まで維持されていることが評価され、「日根荘大木の農村景観」として平成25年10月に大阪府で初となる重要文化的景観に選定されています。新田荘は、現在の太田市を根拠地とした新田一族によって開発された荘園であり、中世の寺社や城館、水源など、11か所が国指定史跡となっています。

 弓削島荘遺跡は、ユネスコの「世界の記憶」に登録された東寺百合文書に多くの記録があり、現在にも塩浜、寺社、地名をはじめとした歴史文化資源が良好な形で残されていることから調査に発展しました。歴史や文化が町に住む人々によって大切に伝えられてきたことが、今回の答申につながったのだと感じました。

一覧へ戻る